「ごっつええ感じ」の面白さが分からない人へ

スポンサーリンク

あなたは正常だ。

世界を変えてしまった才能は、その後の世界の住人からは空気になってしまうという、よくある話だ。

どのカルチャーでも、そういった存在がいる。

例えば漫画だったら「AKIRA」と「ドラゴンボール」がそれにあたる。

一人の発明がそのまま基準を変えてしまうことがある。最近ならスマートフォンがそれに当たるだろう。

松本人志の笑いは、その後の日本のお笑いの型を決定的に変えてしまったのだ。

それが故に全盛期のすごさが伝わりにくい。

「ごっつええ感じ」が面白くないと感じる理由

後続の芸人たちが「ごっつ的笑い」をアップデートしていったからだ。

M-1グランプリを第一回から通してみれば、回を追うごとにレベルが上がっていくことがすぐに分かる筈だ。

つまりお笑いの精度はどんどん上がっていく。だから過去のお笑いは色褪せてゆく。

「ごっつええ感じ」も例に漏れず、今初めて見る人にとっては面白くないだろう。

一方で「あまりにも完成度が高過ぎて今見ても面白いものもある」のもまた事実だ。ドラゴンボールは色褪せているが、スラムダンクは色褪せていない。

「すべらない話や水曜日のダウンタウンで見る松本人志は面白いけど、ネットのおっさんは全盛期はもっと面白かったと言う。だからごっつええ感じはさぞかし面白いんだろうな」と思ってビデオを借りたりすると火傷を負う

松本人志の天才性はどこにあるか

「ごっつええ感じ」は完成度が高いタイプの番組ではない。

「ごっつええ感じ」の凄いところは、新しい笑いを掘り起こし続けたことにある。

それがお笑いのスタンダードとなり、どんどんアップデートされていったので、今初めてごっつを見る人には、このお笑いの何が凄いのかが分からない。

これは松本の才能についても同じことが言える。

松本人志はトークも面白いしバラエティでのリアクションや立ち回りもずば抜けて上手い。

だが松本人志が天才だと言われる所以はそこではない。

お笑いの可能性を広げ、スタンダードを変えようと挑戦し、それに実際に成功したことこと。

それが松本人志が天才と呼ばれるが所以なのだ。

その挑戦をリアルタイムで見た世代は今の「普通に面白い松本人志」に一言言いたくなる気持ちもあるのだろう。

今あるルールの延長線上で一番上手く踊るだけが才能ではない。

もちろん全ての漫画がドラゴンボールの影響下にあるわけではないように、全てのお笑いが松本型であるわけではない。

だが、「型」そのものの発明は松本以降無いと思う。

たけし・タモリ・さんまと松本人志の違い

たけし、タモリ、さんまはそれぞれがそれぞれのキャラを完璧に演じきっている。

テレビの世界では、キャラを演じることは、純粋に面白いことより大事なことなのだ。

松ちゃんはそのような安易なお笑いを嫌ってきた。

毎回決まったゴールに落とすだけのゲームを繰り返すのなんて糞食らえ。

ストイックに純度の高い笑いや新しいお笑いの可能性を探求してきた。

しかし結局観客はキャラクターやアイドル性を欲していたのだという。

ビートたけしも全盛期はお笑いの探求者であったが、現在はその役割を放棄している。

ネットで欽ちゃんが叩かれてたけしが叩かれないのは、今面白いかどうかというよりは、求められるキャラをちゃんと演じているかどうか。たけしは安心するけど欽ちゃんは見ててヒヤヒヤする。

キャラクター>ネタ

世間で「アイドル」と言われている人は、アイドルの一形態でしかなく、お笑い芸人やミュージシャンはまた別の形態のアイドル。彼ら彼女らは芸人や音楽家である前に偶像なのだ。

彼が信仰し至高してきた「コンテンツ至上主義」は「キャラクター至上主義」の今の世の中とは相容れない。

そういった意味では松本は完全に時代錯誤になっている。一歩違えば、とんねるずのように退場していてもおかしくない。

彼はいまだにテレビでキャラクターを確立できていない。映画監督やご意見番をやってみるもしっくりくる感じはない。

ただ松本人志は全盛期からのファンと、サブカルの文脈でついたファンがいるし、番組は面白いし、浜田雅功というキャラクター芸人が相方にいるから、今でも存在感は褪せない。

松本のこれからの舞台はAmazonビデオなのかも

テレビCMでも放送されている「ドキュメンタル」「FREEZE」の2番組はかなりいい。

テレビ以上、映画未満のちょうどいいフロンティアが、松本人志には残されていたんだと思う。

結局松本人志の才能を飼い殺していたのは他でも無いテレビ局(とその視聴者)だったのだ。

この2番組は全盛期を彷彿とさせる新たな挑戦が見られる。

「ごっつ」を見るよりも、今の松本人志を追ってみてほしい。

過去の松本人志論

「未来世紀ブラジル」は映画ではない:松本人志を語る上で避けて通れないモンティ・パイソンについて、比較しながら語る記事。

松本人志は天才だけど映画は面白くなかった。なんで?:タイトルの通りの記事。

スポンサーリンク

ABOUTこの記事をかいた人

漫画家&ブロガー集団。現在、新都社にて完全無料WEBコミック「間の間」を連載中。年齢や国籍にとらわれない、自由な人生を夢見て日々飄々と面白いことやっていきます。