「2001年宇宙の旅 面白さ」
DVDで初めて見て、冒頭の猿のシーンを除き、何が面白いのかさっぱりわからなかったのでググった。大学時代の話。
一生青春日記というブログが引っかかった。
売れない映画監督のブログであった。
サブメニューにポートフォリオが貼ってあったが、僕の知っている映画は当然ひとつもなかった。自主制作映画特有の臭いがモロに出ており近寄りがたさを感じた。
その映画監督の名前でググってみると、 2ちゃんねるのネットwatch板のスレが引っかかった。 詳しい経緯は追っていないが、 プチ炎上したことがあるようだった。
僕はふとそのブログが気になってたまに足を運ぶようになった。
監督の書く文章は不気味にポジティブであった。
無理しているように見えた。鏡に向かって何かを言い聞かせているようにも見えた。なんだか自分自身を見ているようだった。
当時は今と比べて圧倒的に景気が悪く、クリエイターが馬鹿にされる空気は非常に強かった。大学ではいかにして会社に滑り込むかを一年次から真剣に考えさせられる。その重圧に耐えられず僕はサークルやセミナーから逃げ出した。
この人も、いつか気が狂ったりするのだろうか。あるいは拳を下げて社会に揉まれてゆく日がくるのだろうか。
一方では「青春」と言う概念に対する憧れもあった。「一生青春」ホントなら悪くない。10代を棒に振り、大学でも友達を作ることができず、ゲオとブックオフのすみっこでカルチャーと思索にふけることしかできない僕にとって、青春という言葉は無邪気に理想を載せることのできる甘美な響きがあった。
幸あれ。と幸のない僕が思った。
その後、何度目かの「2001年宇宙の旅」を見て、ようやくその映像美や間の取り方の絶妙さ加減、メッセージを多少なりとも理解できるようになった際に監督のブログを見に行った。
ブログの名称が「一生青春日記」ではなくなっていた。文章も角が取れたようだった。ネットウォッチ板のスレもなくなっていた。この人も大人になったのか。だが、映画はとりづけている様だった。相変わらず僕の琴線には全く触れなかったが。
数ヶ月前、数年ぶりに最近監督のブログを見に行った。大学時代は遠い昔だ。
監督は新作映画を上梓したばかりであった。まだ続けていることへの感慨はありつつ「相変わらずつまんなさそうな映画だけどな」と思ってそっ閉じた。
ある日、僕は家でカクテルを作り、ビスケットを摘みながら買ったばかりののスマホでツイッターを見ているとなんだか既視感のある文字をトレンドで見かけた。
なんだったっけこれ。
あー、あの監督の最新作か。
そういえば、「カメラを止めるな!」とか言う名前だったな。