パーマー・エルドリッチの三つの聖痕
The Three Stigmata of Palmer Eldritch by Philip K. Dick
あらすじ
遙かプロキシマ星系から、謎の星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグ〈チューZ〉を携えて太陽系に帰還した。
国連によって地球を追われ、過酷な環境下の火星や金星に強制移住させられた人々にとって、ドラッグは必需品だった。
彼らはこぞって〈チューZ〉に飛びつくが、幻影に酔いしれる彼らを待っていたのは、死よりも恐るべき陥穽だった……現実崩壊の恐怖を迫真の筆致で描いた、ディック円熟期の傑作長篇。
どんな本?
ハードSFとサイケ文学の融合。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(ブレードランナー)」「高い城の男」などSF界の巨匠、ディックのカルト作品。
見どころはドラッグ(チューZ) を服用したあとの幻覚の世界。「チューZ」を服用すると、そこは多次元宇宙のようになるのだが、通常の多次元物と異なるのは誰が服用しても、その世界が常にエルドリッチが支配する世界となる。白昼夢なのだが恐怖と戦慄の世界。本薬を常用すれば、全ての世界がエルドリッチに支配されてしまう。
裸のランチ
Naked Lunch William S. Burroughs
あらすじ
そんなものはない。
どんな本?
クローネンバーグが映画化したW・バロウズの代表作にして、ケルアックやギンズバーグなどビートニク文学の中でも最高峰作品。麻薬中毒の幻覚や混乱した超現実的イメージが全く前衛的な世界へ誘う。
ポストモダン作家に典型的である偶発的な言葉遊び、ストーリーのないストーリー、意味ありげな無意味を如才無く内包した小説。
麻薬と同性愛に溺れる話。
オン・ザ・ロード(路上)
On the Road Jack Kerouac ジャック・ケルアック
あらすじ
スピード、セックス、モダン・ジャズそしてマリファナ……。
既成の価値を吹きとばし、新しい感覚を叩きつけた一九五○年代の反逆者たち。
本書は、彼らビートやヒッピーのバイブルであった。現代アメリカ文学の原点。
どんな本?
青年期のどうしようもないほどの衝動、魂の躍動。
アルコール、麻薬、セックス、ジャズが、全行程に満ちている狂気と乱痴気の旅です。
しかし文体には何か悲しげな雰囲気が立ちこめ、ただの祭りではないように感じられる。
《イルミナティ》三部作
The Illuminatus! Trilogy Robert Shea, Robert Anton Wilson
『ピラミッドからのぞく目』The Eye in the Pyramid (1975) Dell
『黄金の林檎』The Golden Apple (1975) Dell
『リヴァイアサン襲来』Leviathan (1975) ISBN Dell
あらすじ
マンハッタンで、左翼系雑誌社が爆弾テロに遭う。
ニューヨーク市警のヴェテラン刑事二人がそこで発見したのは、世界支配を企むとされる秘密結社イルミナティをめぐる膨大なメモだった。
アフリカの小国でのクーデターをめぐって核戦争の危機が迫るなか、警察、ジャーナリスト、ギャングなどがこの謎の組織を追い始める。
どんな本?
文章構成も文法もめちゃくちゃ。
麻薬中毒者の妄想とか脅迫観念的なイメージでわざと脈絡無くしている。
サスペンスの皮を被ったサイケ小説。
重力の虹
Gravity’s Rainbow Thomas Pynchon.
あらすじ
耳をつんざく叫びとともに、V2ロケット爆弾が空を切り裂き飛んでくる。ロンドン、一九四四年。
その調査に当たる主人公スロースロップが作成するのは謎のナンパ地図。
やつは予知が出来るのか、それともロケットが呼ばれるのか。因果の逆転、探求の旅の始まり。
どんな本?
歴史小説?科学小説?ミステリ?ポルノ?ギャグ?SF?ファンタジー?カテゴリーなど飛び越えて、物理数学工学などほんの序の口、神話に宗教、経済学に心理学、革命に暴力に陰謀史観、セックス・ドラッグ・ロックンロールのカウンター・カルチャーに女装や男色、ボンデージ、フェティッシュ鞭にロリータ超能力やら降霊術、自動書記に怪盗スパイに海賊アナキスト…天才作家の百科全書的な知の坩堝から立ち昇る、「虹」の彼方には何が見えるのか?
現代文学恐るべし。現在アメリカ文学の金字塔という言葉がまさにふさわしい世紀の大傑作。
人類の叡智と人類の馬鹿さを包括して総括したような超大作。