どら焼き屋の店主千太郎(永瀬正敏)と、あん作り名人の徳江(樹木希林)の物語。
日本映画特有の地味~でじめ~っとしたテーマだが、樹木希林、永瀬正敏の渋みのある卓越した演技力によって凄みのある物語に仕上げられている。
リアルさがまず尋常じゃない。
徳江はハンセン病の患者だが、ある日サナトリウムを抜け出してどら焼き屋の千太郎と出会う。あん作りを通して時間と思いを共有する二人。
非日常的に捉えられがちなサナトリウムの住人は、マジョリティである世間と同じように息をして同じように笑いながら生きている。
そんな強烈なリアルがこの物語には描かれている。
千太郎もまた、不運にして服役経験のある者。
社会から弾かれた者同士、得難い絆を紡いでいく。
徳江は「豆の声」を聞くのだと言った。そして「そうして何かを感じることができれば生きている意味はある」と続ける。「何者」にもなれなくとも生きている意味はあるのだと。
生涯に渡り世間から虐げられてきた者の達観がそこにはあると感じた。
そして世間というものがいかに「無意識の加害者」であるかもよくわかる作品だ。これは「いじめ」に通低する。というより社会規模の「いじめ」だ。
そんなことを思った。